現代建築に関する16章 |
入門書としては網羅的かつアンチカタログ的で理解しやすい。=覚えやすい。
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1章「形態と機能」
形態は機能に従うby L・サリヴァン
美のために形があるのではなく、機能が形態を決める
美は結果的にある。
それまでは機能(用)と美は関係していなかったが、初めて関係づけた点に意義がある。それ以前は様式が形態を生成するルールであった。様式においては細部のパターンまで自動生成される。
20c初頭のモダニズム建築のお手本は向上である。大聖堂は美学的意図が入りやすい。
Form follows function
「ポストモダン時代のアフォリズム」
Form follows fiasco「形態は失敗に従う」byピーターブレイク
Form follows fiction「形態は虚構に従う」byミシェル・ドゥネ(物語や虚構が形態の根拠となる)
Form follows metafiction「「形態は宙づり状態に従う」by五十嵐太郎
「形態は規範に従う」by上野千鶴子
⇄山本理顕「空間帝国主義」形態と規範のズレを埋めるのが建築家の役割である。
B・チュミ
「建築と断絶」形態と機能はそもそも断絶している。機能は入れ替え可能であり、そこでのズレに可能性を感じている←60sの学生運動により、計画者側から使い手への視点の転換がある。
=青木淳の原っぱに近い、かつイデオロギーの強い形式性(カール・マルクス・ホーフ)を探求
R・ベンチューリ
機能主義の究極的な姿がアヒルであり、近代建築は装飾を忌避するという機能のアヒルであると痛烈に批判。結局広告という機能を建築に担わせたアヒルは使いづらいという、本末転倒っぷり。逆に「装飾された小屋」においてはそのサイン機能を分離する事で使いやすさとサイン機能を両立していると評価している。
戦後日本の最小限住宅=機能主義の最北⇄「住宅は芸術である」篠原一男、余分なものが多く、機能主義では説明しきれない豪邸の推奨
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2章「バロック」
ルネサンス:完璧、理性的、閉ざされた、実際どう見えるか←空間の萌芽
バロック:不完全、情熱的、開放系、かたちそれ自体、
「バロックの特徴」
16c-17c
楕円
階段=動きの空間として焦点を初めて当てる(19cネオバロック、オペラ座)
新大陸の発見←相対化、不完全化
過剰装飾→プロテスタントに対するカトリックの牽制、権力誇示、スペイン、メキシコ、縄文的装飾
モダニズムは装飾を避ける方向→ポストモダンでは装飾の復権
20c構造表現主義(ニーマイヤー、サーリネン)=近代建築のバロック化
グニャグニャバーチャルアーキテクチャも含まれる。
空間の起源としてのバロック
モダニズムの空間研究がバロックに目を付ける、図としての残余空間の萌芽(ex:19c「広場の造形byカミロ・ジッテ」、「町並みの美学by芦原義信」
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3章 斜線とスロープ
モダニズム→水平の屋根
NY=最初の斜線制限(1916地域指定条例)
<スロープ>
屋外と屋内をつなげるスロープ、階段よりスムーズ、距離が長い、コルビジェが創始者、空間の縦移動を映像的に捉える、実際動画もある、機会に有利
<斜めの都市計画>
ポール・ヴィヴィリオ、クロードパラン1960s
水平→農業社会=「ブロードエーカーシティbyライト」
垂直→工業社会=「輝く都市byコル」
斜め→来るべき情報化社会に適用
<諸参考例>
20c初頭イタリア未来派、ロシア構成主義、20c末期ディコンストラクティビズム
ディコンストラクティビズム=調和を否定し、不安定な状況を表す、ロシア構成主義の隔世遺伝
1988MOMAでの展示、チュミ、アイゼンマン、リベスキンド
<ランドスケープとしての実例>
ポンピドゥー、カンポ広場、大桟橋、斜めはランドスケープと相性が良い
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4章 全体/部分
シュバルの理想宮=ブリコラージュ19c初頭 世界建築情報のコピペ=その時点でフランスの田舎まで情報が伝達していた。アートで言うところのシュルレアリズム
「野生の思考」レヴィ=ストロース 科学者と器用人
科学者=全体、目的が先にある、プロ
器用人=日曜大工的、有り合わせで作って行く、部分が先にある、アマチュア
この2つを別種の思考と位置づけ、近代文明を相対化した。
「コラージュ・シティbyコーリン・ロウ」
ユートピア→全体が先にある
ローマ→部分の衝突や不連続性があり、ブリコラージュ的
「ルーヴァン・カトリック大学学生寮byルシアン・クロール」1960s後半
参加型プロジェクトの始まり、開放系のストラクチャーの提案、スケルトン・インフィルでインフィルは住民がそれぞれに計画、長い期間、広域に展開しているため、定着が自然に起こっている。
「パタン・ランゲージby C・アレグサンダー」
「都市はツリーではない」1965
一般の人たちが参加可能な建築言語を提供、参加システムを明快な論理モデルとして組み立てた
とはいえ、ある程度のリテラシーが参加者に必要であろう。と著者。
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5章 レム・コールハース
<マンハッタニズム>
マンハッタニズムの発見=20c初頭の摩天楼の理論→グリッドによる独立性の担保と斜線制限
その時点でのヨーロッパ型モダニズム=マニフェスト主義(未来派、表現主義、ロシア構成主義)
アメリカでは主義にとって代わり資本主義が都市を造った。
資本主義において経済原理や欲望が最大限ドライブし、制限一杯に作ろうとしたとき生じる現象、そこに芸術的意思は介在していない。ロックフェラーセンター←天才なき建築byレム
・建築的ロボトミー=内部と外部が切り離されている事
・上下階も無関係にプログラムが入る=高層ビルが一つの都市
⇔モダニズムの裏返し(外部は内部の表出、一つの建物が一つの機能に対応
→すでにNYはモダニズムを超えていた
cx:マンハッタンは針と球の複合体、最小の土地面積で最大の容積を得る
<ビッグネス>
建築があるスケールを超えると、古い建築のモラルは吹き飛ぶ
60sのメガストラクチャーはただ巨大化すれば都市が造れると考えたが、ビッグネスになると価値判断自体が変化してしまうので、違う論理がひつようになる
<MUTATIONS>
ラゴスはそこかしこで機能不全が起こっており、想定された使われ方が全くなされていないが、にもかかわらずラゴスは機能している。
<ジェネリック・シティ>
都市の空港化
<ジャンクスペース>
エスカレータによって、空間を連続させ、エアコンによって空間が閉じる。すなわちガス攻めに合えば、ひとたび全滅。管理下におくという事の良くない面がさらされた。
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6章 住宅建築
閉じる住宅
セキュリティ業界の発展=住吉の長屋
巣的住宅=内部優先、塔の家、スカイハウス、White U、居住者よりの視点
ハイデッガー
生きる=住む=建てる
家は住むための器になっている、つまり、住む事から思考が抜け落ちている=住むと建てるの分裂
→現代において「住む、建てる、思考する」を実現する場所が建築家自邸→住宅のメディア化
小さな家と母の家=排他的ではなく包含的であること
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7章 身体
柱と建築
ドリス=男の足のサイズ:身長
イオニア=女の足のサイズ:身長
カリアテッド=人形の柱
「ダンシング・ハウス」byゲーリー 柱によって不安定を表す⇔古典主義建築では常に直立不動の身体を想定
<身体の延長としての建築>
アーキグラム、宇宙服がそのまま膨張して建築化
阿部仁史、包み込まれるような皮膜としての空間←ヒンメルブラウ
←サイバースペースとの結合
東京遊牧少女のパオ1985、
高貴な野蛮人、文明に依存しながら緑を求める
電子のアボリジニ1971 人間が映像に没入する、ネット依存の身体
身体感覚の変化と建築の関係性の変化
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8章 日本的なるもの
縄文=古典、白井晟一「縄文的なるもの」、ごつごつ、アポロ(磯崎新)、バロック的、将軍的(東照宮)(タウト)、仏教建築(日本のものではない)(伊東忠太、岸田日出刀)、曲線、大衆的(岡本太郎)、ヤバンギャルド(藤森輝信、縄文の復権)、赤派(藤森)
弥生=ゴシック、洗練されている(香川県庁舎)、あっさり、ディオニソス(激情、陶酔)(磯崎新)、天皇的(桂、伊勢)(タウト)⇔古典主義最高峰パルテノンと比肩、モダニズムと接続し得る、神社建築(日本的)(伊東忠太、岸田日出刀)、直線、貴族的、隈研吾、白派(藤森)
弥生的なものをモダニズム、天皇に結びつけ、外来を排除するというナショナリズムが戦争へ傾倒する一端を担う。
丹下は桂を貴族と大衆的なものの双方が流れ込んでいるから良いと判断している。
1950sは世界でもブルータリズムが流行し始め、弥生から縄文への流れが世界的にもあった。
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9章 戦争
太平洋戦争→近代化を成し遂げたレンガ作りの建築がことごとく崩壊→日本独自の構造技術の発展
西洋的廃墟=跡形が残っている状態← 18c末-19c初頭ロマン主義(反理性的古典主義)
(ex:「つくばセンタービル」by磯崎、「バンク・オブ・イングランド」byジョン・ソーン、共に廃墟のイメージを添付)
<破壊と構築>
磯崎新(シンとアラタ)
・アモルフなもの、
「孵化過程」←参加型アート
「コンピュータ・エイデッド、シティ」←コンピュータの核と無(全)機能な実空間
「海市」建築家を多数招聘、偶発的なアクシデントを起こす
・構築的なもの、古典主義建築、プラトン立体
<メタボリズム>
オリンピック、万博←高速で建築を壊す→新陳代謝へ
諸行無常←焼け野原の日本的廃墟イメージ
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10章 スーパーフラット
<スーパーフラットの意>
・上下関係のない、個々が独立した組織形態
・差異のない世界
・表層の強調
「カメラアイがない。奥行きがない。階層構造がない。内面がない。あるいは、人間がいない。しかし、視線がいっぱいある。ぜんぶに焦点が当たっている。ネットワークがある。運動がある。そして、自由がある。」by村上隆
<建築におけるスーパーフラット>
2.5次元=ファサードに偏るデザイン=Q-FRONT、小笠原資料館、スクリーンの模倣
⇔4次元=ハイパーサーフェイス=サインと物質の融合、情報発信の皮膜と構造の融合、NOX、グレッグリン、スクリーンの中の現実化
・ヒエラルキーの解体
金沢21世紀美術館、メイドイントーキョー、ユニット派、データスケープ(MVRDV)
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11章 歴史と記憶
<モダニズム>
=歴史の最先端←G・ギーディオンによる通史、直線的
歴史あっての現在という認識が当然であった。現在はだれも通史を書けない。+価値観の多様化+構造主義+ポストモダンにおける歴史引用→歴史の多様化→歴史認識の衰退
チャールズ・ジェンクス=小さな物語の集積として歴史を表現。
<リバイバル>
19c ゴシック・リバイバル=産業革命に対し、中世のゴシックに回帰
デザインー単なる懐古主義
思想ー社会状況の現れとして再評価、細部まで機能的に決定されたものとして評価、←フランス啓蒙主義がもたらした合理主義をゴシックに照射。
<保存、修復と歴史認識>
修復には歴史の完璧な認識が必要とされるが、ある程度創造で賄ってしまう。その一方的な解釈により歴史が誤って保存されることもある。
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12章 場所と景観
地域主義の萌芽ー広範な地域に同一の思想を持って建築を建てられる状況になって始めて地域の差異が炙り出され、地域主義が歌われるようになる。古代ローマ帝国のウィトルウィウス、インターナショナルスタイル、戦火日本のアジア侵略に置ける神社様式
<ゲニウス・ロキ>ー精霊
ノルベルグ・シュルツ(作る理論として)
・ロマン的景観ーゲルマン的、山、森/部分の連なり/アールト
・宇宙的景観ー砂漠、天と地/幾何学/カーン
・古典的景観ーラテン的、海/明快さ/コル
「20cはゲニウス・ロキが無くなっていく時代である」
鈴木博之(都市の解釈として)
「東京の地霊」
土地にあるそれぞれの物語に焦点を当てる、計画者の歴史ではなく、地主の歴史
<反モダニズム>
ナチス/バウハウス弾圧→ハイマート様式、A・シュペーアによる古典主義への回帰+ナショナリズムとしての地域主義
<批判的地域主義>byケネス・フランプトン
記号化した観光主義の地域主義ではなく、普遍性と固有性を調停したもの
普遍性ー技術
固有性ー地域環境
の2つを弁証法的に調停していく。5感をフル稼働させる建築
記号への嫌悪(ベンチューリ的広告コミュニケーション評価主義では切り捨てる要素が多すぎる)
ex/安藤忠雄、ヨーン・ウッツォン/ラファエル・モネオ/バラガン/象設計集団(固有より)
<ダーティ・リアリズム>
A・ツォニスとA・リフェーブルの「批判的地域主義」
ある文脈に異物を挿入することによって逆説的に地域性を炙り出すこと。
→ダーティ・リアリズムへ
どうしようもない、場所の否定的な部分を取り出し、それらの属性を強化するような建築を挿入することによって、逆説的に普遍性を炙り出すこと。
OMA/IITキャンパスセンター/高架によって曲げられた屋根線。
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13章 ビルディングタイプ
<ビルディングタイプと様式>
中世=宗教建築→近世=様々なビルディングタイプの発露
<日本への輸入時における様式の咀嚼>
銀行=古典主義(荘厳なイメージ)
大学=ゴシック(ヨーロッパの大学では宗教建築が転用されたケースが多い)
チャペル=ゴシック
<パノプティコン>
プログラムと社会制度の結託
「監獄の誕生」byミシェル・フーコー
一望監視システムにより牢人を精神的に監視。→現代に置ける信号やあらゆるルールにも適用
<神殿か、獄舎か>by長谷川堯
神殿=古典主義建築、外側、モニュメンタル、ギリシア神殿、丹下健三、オス
獄舎=内的、内部性、大正時代、分離派、村野藤吾、メス
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14章 情報
仙台メディアテークコンペ案(古谷誠章+杉浦久子)
コンピュータ管理を前提とした散策空間としての図書館を提案。
丹下、黒川、アーキグラム、磯崎、伊東らによる情報化社会への予言
「情報化社会はシンボリズムの時代になるだろう」by黒川
ケータイ登場による身体感覚の変化→近くて遠い、遠くて近い→建築化(T−houseに代表される離れているのにつながっている空間)
ここから私見であるが、同僚の市川君は仙台のコンペで伊東案が勝ったことが、リテラルな技術ではなく、一度抽象化した解釈(空間や身体感覚)としての情報化社会への適用にアカデミズムが傾斜したきっかけとなったと批評した。鋭い。やはり、技術の使用ではなく、概念の方から「新しさ」に繋げる所が、アカデミズムというものか。そのアカデミズムが今やおしゃれとして消費され袋小路になっている折、情報化を積極的に自らの文脈に取り込む藤村龍至という人間が出てくるあたりもなかなかドラマティック。
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15章 メディア
近世の活版印刷普及以降、古くから建築はメディアによってそれ自体の方向性を定義されてきた。
16c作品集の始祖アンドレア・パッラーディオ「建築四書」
19c建築雑誌の誕生
1983 「想像の共同体」B・アンダーソン
メディアによって想像の共同体が出来上がる。
ピーター・コリンズ
メディアとディテールの相関関係を指摘。印刷精度が悪いとディテールも悪くなる。
<写真の登場>
モダニズムでは写真映えする直線や陰影のはっきりした形態が好まれた。
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16章 透明性と映像性
「マにエリズムと近代建築」by コーリン・ロウ
リテラルな透明性ーガラス建築、ギーディオンによれば神殿に代表される古典主義は外部の建築、教会建築に代表される中世は内部の建築、それらをつなぐのがガラスすなわちモダニズムと捉えられている。
フェノメラルな透明性ーコルに代表されるようにファサードは不透明でも構成の多層性により透明性が得られるのではないかという深読み。これをマニエリスムやバロックの複雑なファサードへも適用。透明性が出てきたことによって初めて成立した思考法。
リテラルな映像性ーQーFRONT、NOX等、建築に映像を映す
フェノメラルな映像性ー青木淳のヴィトンやSANAAの空間体験としてのガラス