第三回浜松建築会議開催 |

僕が浜松を選んだきっかけは、後藤連平さんの呼びかけから始まった親睦会を経て企画されたこの浜松建築会議だ。第一回浜松建築会議によって、静岡文化芸術大学の学生の方々との関係性を築けたし、ennやnaruも知れたし、中心市街地への興味も生まれた。登壇したのは、実行委員メンバーに加えて、藤村龍至氏、山崎亮氏、dot architects、連勇太朗氏、渡辺隆氏、中村成孝氏。豪華すぎる布陣だ。この時山崎亮氏に403について「それで食っていけるのか、お金を生めるのか、継続できるのか」という言葉をもらったことを思い出すと、この問いとこの時築いた関係が今我々の周囲に張り巡らされているのはやはり偶然ではなく必然と呼ばざるをえない。今回で三回目である。
第三回を迎えた今、自分は403architecture [dajiba]という設計事務所を共同主宰している。
思い返せば、学部三年の時に今のdajibaのdabaと初めて共同設計してそれが強烈に楽しかった。1人で設計課題をする何倍も三人での設計は楽しく、この三人なら建築の根源をひっくり返せると思った。二人とはそこからコンペなどで事ある毎に共同設計し、大学院時の403architectureの活動に繋がっている。大学から大学院まで1人での設計課題は10回以上あったが、納得できたのは数えるほど。三人での共同設計はすべて納得できたし外部評価もそれなりについてきた。当初予定していたよりも独立がだいぶ早まったが、一緒に設計するならこの三人だと決めていた。あれから7年、寝るのも起きるのも家族より長くだいたい共有してきた。今、食っていくのに必死でまじで金ないが、正直、心底楽しい。
それに対して、1人での活動は設計ではなかなか喜びを体現できなかったが、大学院の時に建築ノートの企画table of youthで初めて自分の文章を世に出す機会を得た。その企画を担当していたのが明後日浜松建築会議に登壇する藤村龍至さんで、氏と出会ったのもこの時。僕はその誌面で、「スタディ模型はつくりたくない」というタイトルの短い論考を書いた。建築を構成する要素は模型を作らないとわからないものと作らなくてもわかるものに分けられ、僕は後者のみによって建築を作りたいという旨を書かせていただいた。タイトルをつけたのは藤村氏である。この論考に唯一強烈に反応してくれたのが連勇太朗である。自分の脳みその中を文章にして表すことは1人で建築を設計する時の何倍も淀みなく溢れ、いろいろな講演会のレポートを書くようになり、メディアも含め大学以外の関係が少しずつ広がった。
このころからなんとなく、共同作業は設計行為、単独作業は執筆行為とメディエイションという住み分けが自分に合っているという感覚を得るようになった。共通するのは、コミュニケーションである。設計行為を共同で行うのは他者からのメッセージを内部化する創作行為であるし、執筆行為は自己のメッセージを外部化する思考装置である。この2つの作業に表象される建築を中心にした自分のコミュニケーションの枠組は、浜松というエッセンスを加えて、教育に修練していくと思っている。あるいは教育的価値に置き換わっていくことで社会化されると考えていると了解されるかもしれない。縮小社会においてコミュニケーションによって関係性を築く行為の教育が求められ、あるいは、コミュニケーションによって関係性を築く行為自体が教育価値を持ち、教育価値がコミュニケーションによって循環する可能性を秘めているからである。そう考えると、アンテナの活動は「教育のためのまちづくり」がテーマであり、浜松建築会議は「教育のための建築」がテーマであり、そのアウトプットのエンジンとなるのが、「教育のための都市」を実践する設計活動なのである。
教育のための建築という第三回のテーマは、共同で設計施工することの社会的価値を検証するためのものである。31名の学生が6チームに分かれ議論し共同で設計施工を進めた過程と成果と、重田勝介氏、藤村龍至氏の基調講演を題材にして当日は議論が進むだろう。
もう一つの主題は、実行委員会が仮設建築設計施工に際して提案した23項目の条件が1つの教育システムとして自立し、その自立したシステム設計自体が、学生も実行委員をも教育したという事実である。他者を巻き込んだ設計行為自体が他者化し、自立し、設計者を含めた周囲に影響を与えるという枠組を設えることが建築的思考の価値だとする仮説への検証であるとも言える。
要するに、一緒に建築をつくるとわりと議論できるようになるし、縛りがキツイ状態の方がいい共同設計できるし、そういう設計環境を設計することから私たちはたくさんのことを教育されるんです、その時教育するのは私達ではなく建築という概念それ自体なんです。ってことを整理して共有するための議論の場所を設計しました。ということです。
当日は是非浜松へお越しください。
□テーマ:
教育のための建築/Architecture for Education
□関連企画:
創造都市実現へむけた建築デザインによる創造的教育事業(仮設建築設計施工ワークショップ)
□主催:
浜松建築会議実行委員会
□実行委員:
大東翼(大東翼建築設計事務所主宰)
辻琢磨(403architecture [dajiba]共同主宰)
中村紀章(中村☓建築設計事務所共同主宰)
高塚陽介(HIROMASA MORI plus YOSUKE TAKATSUKA / H Y A D 共同主宰)
寺田隼(アトリエ樫スタッフ)
□協賛:
グラフィソフトジャパン株式会社、総合資格学院
□協力:
株式会社ヤタロー、田町パークビル株式会社、kenken(静岡文化芸術大学建築研究会)
□概要:
「第三回浜松建築会議」は3/16に、建築家・藤村龍至氏、東大助教・重田勝介氏をお呼びして「教育のための建築」をテーマに建築を共同で作ることがどのような教育効果を生むかについて議論します。
同時企画「ワークショップ」では参加学生30名が5人6チームに分かれ二ヶ月間にわたって様々なスケールの仮設建築を設計施工し、浜松建築会議当日はそのコミュニケーションの過程(全動画記録)を成果として報告、共同設計共同施工の教育価値を検証します。
当日のシンポジウム会場には「ワークショップ」で制作された仮設建築で会場を構成します、来場者の方々には建築の議論と実物の建築の両方をお楽しみいただけます。
<日時>
2013.3.16(SAT) 10:00〜16:30
<第一部会場>わいわいやらまいか広場(浜松市中区肴町323-13)
<第二部、第三部会場>多目的スペースhachikai(浜松市中区田町327-24万年橋パークビル8F)
<雨天時会場>多目的スペースhachikai(浜松市中区田町327-24万年橋パークビル8F)
| SYMPOSIUM PROGRAM |
【Session1】講演
10:00 - 11:00 基調講演A:重田勝介氏(東京大学総合教育センター 助教)
東大で教育工学を研究されている重田氏に、アドバイザーと して関わってくださっている今回の「ワークショップ」についての概要とご自身の研究背景と合わせ てお話して頂きます。
11:15 - 12:15 基調講演B:藤村龍至氏(東洋大学専任講師/藤村龍至建築設 計事務所 代表)
公共施設の更新、維持管理問題をテーマに、住民参加型の共 同設計を大学教育に導入して話題になった「鶴ヶ島プロジェクト」。市民参加と共同設計を取り込ん だその複合的な教育環境を「設計」された目的や、教育と建築の関係についてお話して頂きます。
【Session2】ワークショップ成果報告
13:30 - 13:40 実行委員によるアウトライン説明
13:50 - 14:30 ワークショップ成果報告
当日シンポジウム会場に配置される仮設建築を眼の前にして「ワークショップ」の成果を報告します。実際に制作された建築について、その建築に至るまでのチーム内での議論を報告させて頂きます。
【Session3】全体トーク
15:00 - 16:30
テーマ:「建築的思考の教育価値」
モデレーター:浜松建築会議実行委員
建築物や町並みの価値や、建築教育の価値だけではなく、建築を共同で設計し、施工することも同様に建築を取り巻く価値の一つであるという仮説のもと、建築的思考の教育価値について、実行委員、ゲスト、参加学生、来場者全体で議論を深めます。
詳細はweb siteにて