2009年 02月 22日
1995以後・レビュー/vol1 |
藤村龍至氏+Team Round About初の著作「1995年以後」が発売された。
「超線形プロセス」や「批判的工学主義」により自身の設計スタンスを明確に言語化し、その言語を利用して「Live Round About Journal」、「Round About Journal」での対外的な議論からネットワークを構築し(相対化し)、また自身の設計へフィードバックするという環境循環を氏は構築している。もちろん、自己循環ではなく「建築」の社会的な循環を氏は目指している。
この本は、そうした循環の一部だと思われる。
若手建築家や研究者32組へのインタビュー集となっていて、巻頭文章の表題は「『1995年以後』というコンテクストをとらえるために」とある。一応理由はあるものの、1995年という節目を設定したのも32組という設定も71年から83年生まれの人たちを対象にしたことも「とりあえず」という感じで決まったのではないだろうか。
この本の意義はそうした数字ではなく、
一つの明確な思想を持った個(団体)が、
同時代の、
同年代の、
同業者の
複数人にインタビューをし、活字媒体に変換した事実そのものにある。
「批判的工学主義」の内容は一応理解したつもりでいたが、実際具体的にどうすればいいのかというところで自分の思考は止まっていた。言葉の強さとは裏腹にその輪郭は非常に曖昧なものであった。
この本を読んでその輪郭がわずかだがくっきりしたように思う。郊外化、権力型アーキテクチャ、商業主義に対するスタンスという話題を中心に、「批判的工学主義」、「30前後の若手建築家群の思想」、「自分」、「社会」といった、この時代特有の曖昧なモノの輪郭が炙り出されていく感覚はこの本特有のものである。
ただ単に、やみくもにインタビューを集めてもこうはならない。
特定の人物が、特定の人たちに、特定の思想についてインタビューをするということが、多様化した個の時代に、一つの基準を与えているのである。彼等の一貫性と行動力がこの結果を生んでいる。一つの基準をこの時代に与えること。現代において、それはともすれば「空気が読めない」という印象を与えるが、彼等の覚悟と勇気には脱帽である。
氏はRound About Journalにてこのレビューを掲載するらしいが、今回は日本全国、総勢20名のブログによるレビューが二回に分けて一斉にリンクされるらしい。
時代の一つの基準となるこの本を多様な個人がブログでその批評を行うことで、この本の「様々な輪郭をくっきりさせる感」はまた増幅するであろう。このブログもその一端を担っている。私もできるだけ忠実に「くっきり感」を伝えるために全体を通した感想ではなく、32組分のそれぞれの感想を、部分の集積の一部として下記vol.2に記したい。それが私の(私たちの世代からの)、社会へのメッセージとなる。
「超線形プロセス」や「批判的工学主義」により自身の設計スタンスを明確に言語化し、その言語を利用して「Live Round About Journal」、「Round About Journal」での対外的な議論からネットワークを構築し(相対化し)、また自身の設計へフィードバックするという環境循環を氏は構築している。もちろん、自己循環ではなく「建築」の社会的な循環を氏は目指している。
この本は、そうした循環の一部だと思われる。
若手建築家や研究者32組へのインタビュー集となっていて、巻頭文章の表題は「『1995年以後』というコンテクストをとらえるために」とある。一応理由はあるものの、1995年という節目を設定したのも32組という設定も71年から83年生まれの人たちを対象にしたことも「とりあえず」という感じで決まったのではないだろうか。
この本の意義はそうした数字ではなく、
一つの明確な思想を持った個(団体)が、
同時代の、
同年代の、
同業者の
複数人にインタビューをし、活字媒体に変換した事実そのものにある。
「批判的工学主義」の内容は一応理解したつもりでいたが、実際具体的にどうすればいいのかというところで自分の思考は止まっていた。言葉の強さとは裏腹にその輪郭は非常に曖昧なものであった。
この本を読んでその輪郭がわずかだがくっきりしたように思う。郊外化、権力型アーキテクチャ、商業主義に対するスタンスという話題を中心に、「批判的工学主義」、「30前後の若手建築家群の思想」、「自分」、「社会」といった、この時代特有の曖昧なモノの輪郭が炙り出されていく感覚はこの本特有のものである。
ただ単に、やみくもにインタビューを集めてもこうはならない。
特定の人物が、特定の人たちに、特定の思想についてインタビューをするということが、多様化した個の時代に、一つの基準を与えているのである。彼等の一貫性と行動力がこの結果を生んでいる。一つの基準をこの時代に与えること。現代において、それはともすれば「空気が読めない」という印象を与えるが、彼等の覚悟と勇気には脱帽である。
氏はRound About Journalにてこのレビューを掲載するらしいが、今回は日本全国、総勢20名のブログによるレビューが二回に分けて一斉にリンクされるらしい。
時代の一つの基準となるこの本を多様な個人がブログでその批評を行うことで、この本の「様々な輪郭をくっきりさせる感」はまた増幅するであろう。このブログもその一端を担っている。私もできるだけ忠実に「くっきり感」を伝えるために全体を通した感想ではなく、32組分のそれぞれの感想を、部分の集積の一部として下記vol.2に記したい。それが私の(私たちの世代からの)、社会へのメッセージとなる。
by tsujitakuma
| 2009-02-22 21:05
| book